○小平市第四次長期総合計画基本構想

令和2年12月18日

議決

第1章 基本的な理念

基本的な理念とは、市民、事業者、行政など、全てのまちづくりの主体が共有し、大切にしたいまちづくりの姿勢であり、まちづくりに取り組む際に、常に立ち返るべき基本的な考え方です。

小平市自治基本条例」の前文では、小平市の地域性や将来に向けてどのようなまちを目指すのかについて明らかにし、小平市の自治の規範として、条例を制定する旨を宣言しています。

この小平市自治基本条例前文の考え方を踏まえ、次のとおり基本的な理念を定めます。

基本的な理念

私たちは互いに認めあい、支えあい、助けあい、安全安心に住み続けられるまちづくりのために力を合わせます。

私たちは「こだいら」の豊かな環境を守り、文化を育て、協働を積み重ね、持続可能な地域社会を次の世代に伝えます。

第2章 めざす将来像

基本的な理念を踏まえ、12年後に目指す小平市の姿として、次のように将来像を設定します。

つながり、共に創るまち こだいら

私たちは、人と人との温かいつながりや、人と地域との心強いつながりで、これまでのまちづくりを行ってきました。つながりは、安全安心の基盤を築き、豊かさを生み出します。これから新たな時代に対応しながら、これまで培ってきたつながりを土台に、新しいつながりの形を探求し、多様なつながりを育みます。

そして、市民、事業者、行政、関係人口や交流人口などが、それぞれに持つ資源を結集し、役割分担をしながら、これからも魅力的で誇りに思えるまちを、心のゆとりを持ってみんなで共に創っていきます。

第3章 取組の方向性

1 基本構想の体系

小平市では、多くの人が住み、働き、学び、活動しています。まちづくりには、その主役となる「ひと」、人が営む日々の「くらし」、そして、「ひと」や「くらし」のステージとなる「まち」が重要な要素となります。

将来像の実現に向けては、人が育ち、学び、新たな価値を創造する「ひとづくり」、多様性を認めあい、つながり、共生する「くらしづくり」、自然と調和した、美しく快適で、魅力ある「まちづくり」の3つの基本目標に沿って取組を展開します。そして、「ひと」や「もの」などの資源を活用し、「ひとづくり」「くらしづくり」「まちづくり」を進める「自治体経営方針」を定めます。

さらに、それらを横断するプロジェクトを設定します。

2 基本目標

基本目標Ⅰ ひとづくり ―人が育ち、学び、新たな価値を創造するまち―

目指す方向性

「くらし」も「まち」も「ひと」がつくっていくものであり、ひとづくりがまちにとって一番大切な観点となります。小平市は、歴史ある学園都市であり、この恵まれた環境のもと、生涯学び続け必要とする様々な力を養います。そして、地域社会を担い、将来にわたって多様に活躍できるひとづくりを目指します。

令和14年のありたい姿

地域の見守りをはじめ多様な主体によって、全ての子どもと保護者のライフステージに応じた子育てを支える仕組みが構築され、安心して子どもを産み育てることができる環境が整っています。

学校、家庭、地域等が一体となり、子どもたちが学びあい、育ちあい、その成長を支えあう教育環境が整っています。子どもや若者が、将来に夢や目標を持ち、才能や個性を伸ばしてたくましく生き抜く力を育んでいます。

進学等を機に小平に通学・転入した若者が、地域に愛着を持ち、小平に住み続け、地域活動の担い手となっています。

地域で暮らす誰もが、生涯にわたってあらゆる機会にあらゆる場所で学びあい、文化やスポーツに親しみ、交流の輪が広がるとともに、その成果を適切にいかして豊かな人生を送っています。

人生100年時代において、いくつになっても学ぶことや働くことができ、ライフステージに合った暮らしを充実させています。様々な経験や知識をもつシニア世代は、その意欲と能力に応じて、社会の担い手の一員として活躍しています。

身近なところで郷土の文化芸術に親しむことができ、途切れることなく次世代に継承されるとともに、多様で様々な価値観を持つ人々が集まることで、既存の価値観を変える遊びの精神が融合し、新しい価値が生み出されています。

方針1 全ての子どもの育ちと自立を支援する(子育て支援、学校教育、若者活躍)

(12年間の取組の視点)

子どもを中心に位置付け、子どもの健やかな成長を支援します。保護者の子育てを地域や行政が連携して支えます。

少子化、核家族化、価値観の多様化など、子どもを取り巻く環境の変化に対応しながら、妊娠期からの包括的な支援をはじめ、子どもの成長や発達の段階に応じた継続的で多様な保育サービスや、相談・交流の場の充実など、安心して子育てができる環境の整備に取り組みます。

ICT教育環境の整備を進め、児童・生徒一人ひとりの置かれた状況に応じた学びの充実を図ります。

それぞれの子どもの可能性を引き出し、才能や個性を伸ばす教育、言語能力やコミュニケーション能力を高める教育、視野を広げ社会性や国際性を養う教育に取り組みます。

社会が激しく変化する中にあっても、夢や目標に向かって未来を切り拓いていけるよう、地域社会が協力して子どもの生きる力を育みます。

様々な分野において若者の可能性を引き出し、才能や個性を磨き伸ばすことができる環境を整え、地域の発展を担う人材として、たくましく成長することを支援します。

方針2 全世代が元気にはつらつと過ごす(健康づくり、スポーツ、生涯の学び)

(12年間の取組の視点)

「健康都市こだいら」として、家族や地域で支えあいながら、一人ひとりがライフステージに合った健康づくりに取り組める環境を整えます。

人生100年時代を見据え、若い頃から心身の向上を図り、食生活も含めて健康を意識した生活を心掛けて、健康寿命を延ばしていく取組を進めます。

小平市に練習場のあるFC東京をはじめとする多様なスポーツ振興の担い手との連携・協働の下、スポーツ施設やスポーツに関連するイベント等を活用しながら、生涯を通じてスポーツを楽しむことができる環境づくりを進めるとともに、世代や国籍の違い、障がいの有無などを超えた、様々な交流による相互理解を促進します。

生涯学習に関する従来の取組に加え、学園都市としての特性をいかした多様な教育機関との連携により、様々な学びの場と学びの機会を充実させ、誰もが生涯にわたり成長し、活躍できる環境づくりを進めます。

方針3 まちの誇りを受け継ぎ、発展させる(歴史、文化芸術)

(12年間の取組の視点)

子どもから大人まで、地域の伝統・芸術・文化・歴史・自然に対する認識を深め、郷土愛を育みます。

文化芸術に触れる機会の充実を図るとともに、文化芸術活動を通した交流を促進します。

文化財の保存と啓発を進め、確実に後世に継承するとともに、地域振興の資源としての活用を図ります。

歴史や文化芸術を通した世代間の交流を促進し、高齢者が長年培った知識や経験、技能が失われることなく次世代に継承されるよう取り組みます。

基本目標Ⅱ くらしづくり ―多様性を認めあい、つながり、共生するまち―

目指す方向性

「くらし」は、地域社会を担う「ひと」を支える基本となるものです。地域では、多様な人々の暮らしが営まれています。多様な人々が集まる中で、様々な意見や価値観の違いを理解しながら、新しいものを生み出していく力に変えていきます。支えあいのネットワークから誰一人として排除されることのない社会、地域全体で多様性を包み込み、地域で共に生きるあたたかいくらしづくりを目指します。

令和14年のありたい姿

年齢の違い、性別や性的指向・性自認の違い、障がいの有無、様々な文化の違い、国籍の違いを超えて、お互いを尊重し、誰もがその人らしい暮らしを実現するとともに、自分らしく活躍しています。

女性の活躍がより進み、多様な視点や価値観、創意工夫がもたらされ、社会を変える力となっています。

地域における保健、医療、福祉の連携による包括的な支援体制の整備が図られるとともに、地域のあらゆる住民が、支え手と受け手という関係を超えて、我が事として支えあい、地域の誰もが自立し安心して暮らしています。

世代間の交流が進み、地域の課題が広く共有されるとともに、ICTによるネットワーク形成がつながりの新たな形として定着し、地域活動への参加が促進されています。

時間や場所にとらわれない働き方が進んだ現役世代は、家庭や地域に滞在する時間が増え、ワーク・ライフ・バランスが実現し、身近な分野でコミュニティを支える中心となっています。

一人ひとりが災害への適切な備えをし、地域の防犯力・防災力が強化され、みんなで助けあいながら、安全で安心な生活を送っています。

方針4 お互いに尊重し、活躍できる社会の実現(男女共同参画、障がい者支援、多文化共生)

(12年間の取組の視点)

共生社会の実現には、子どもの頃からの学びや体験が重要であることから、学校教育とも連携して人権への理解を深めます。

性別にかかわらず、個性と能力を十分に発揮することができる環境を整えるため、啓発などの取組を進めます。

多様な性に対する認識や理解を深めるとともに、性的マイノリティの困難に寄り添った支援に取り組みます。

障がいの有無にかかわらず、一人ひとりの個性が尊重され、自分らしい生活を送ることができるよう、それぞれの能力や特性に応じたきめ細かい支援を実施するとともに、地域における障がいへの理解を深め、居場所や活躍の場づくりなど、社会参画の機会を創出します。

国籍や人種を問わず、全ての住民が地域にとけこみ安心して生活できるようにするため、言語や習慣、文化の相互理解を促進します。また、日本人・外国人住民が、ともに地域の担い手として連携し、生活上の様々な課題の解決を進められる住みよい地域づくりを目指します。

方針5 地域の絆で支えあう(介護、保健福祉、生活支援)

(12年間の取組の視点)

可能な限り自立した生活を送れるよう、身近な通いの場が多数ある地域づくりを進め、健康保持や介護予防の取組を推進します。

誰もが、住み慣れた地域で安心して自分らしい生活を送ることができるよう、地域の主体的な福祉活動を支援するとともに、互いに見守り支えあう仕組みと、専門機関を含めた包括的な相談支援体制を構築し、地域共生社会の実現を目指します。

高まる医療需要を見据え、地域の医療機関との連携及び役割分担を推進し、適切な医療提供体制を確立するとともに、切れ目のない医療体制の充実を図ります。

ひきこもりや貧困などの問題に対して、個々の状況に応じた支援対応の充実を図り、社会的自立を後押しする環境をつくります。

方針6 誰もが安心と生きがいを持つ地域づくり(地域コミュニティ、安全・安心)

(12年間の取組の視点)

様々な活動に関する情報の発信や、活動に参加するためのきっかけづくりなど、地域をより暮らしやすくするための支援を行います。

複雑化・多様化する地域課題の解決に向け、様々な分野において活動する市民と対等な立場、適切な役割分担のもと、連携・協力したまちづくりを推進します。

社会全体のデジタル化が進む中で、特に障がい者や高齢者、外国人の視点に立ち、誰もが平等に情報を入手し利用することができるよう配慮するとともに、地域での情報共有化が図られるよう、新たなコミュニケーションのあり方も含め取り組みます。

地域住民の自発的な防犯・防災活動の促進と、自主防犯組織や自主防災組織の実践的かつ効果的な活動の支援に取り組むことで、自助・共助による取組や、関係機関との連携による防犯力・防災力を高めます。

市内事業者による防犯・防災の取組と連携します。

基本目標Ⅲ まちづくり ―自然と調和した、美しく快適で、魅力あるまち―

目指す方向性

「まち」は、「ひと」や「くらし」の基盤となります。小平市にある水や緑の美しい憩いの空間が適切に保全された快適性と、駅周辺を中心とした利便性が調和し、暮らしやすく、将来にわたって魅力と活力に満ちたまちづくりを目指します。

令和14年のありたい姿

一人ひとりの環境意識がより高まり、エネルギーが有効に活用されるとともに、資源が適切に循環しています。また、気候変動の影響に適応した暮らしが営まれています。

水や緑が多くの人の手によって大切に守り育てられ、多様な生きものが生息し、暮らしに癒しと安らぎをもたらしています。

駅周辺を中心に様々な機能がより一層集約し、コンパクトで歩いて暮らすことができる安全安心かつ快適なまちが形成されています。

地域経済の中核を担う中小企業の活発な事業活動が展開され、地域経済の好循環が実現しています。

地域の商店が地域住民にとって便利で心強い場として、地域における豊かな交流を生み出しています。

ライフスタイルが多様化する中、誰もがそれぞれのライフステージに合わせた働き方を選択でき、関係団体等との連携の強化や企業支援などを通して、多様な雇用機会が創出されるとともに、テレワークやサテライトオフィスなどにより、小平市が暮らしながら働けるまちとして若い世代から選ばれています。

農地の持つ多面的な機能をいかした取組が展開されるとともに、四季折々の市内農産物が様々な場所で手に入り、豊かな交流と豊かな食文化が継承されています。

自然環境や歴史・文化などの地域資源を活用した観光の取組、民間事業者との連携などにより、市内外から訪れる人で賑わい、様々な交流が生まれています。

方針7 水や緑を保全・創出し、環境にやさしい循環共生型の社会を形成する(緑、環境、資源循環)

(12年間の取組の視点)

水や緑、生きものを身近に感じながら、心豊かな生活を送ることができるよう、地域住民や多様な主体との連携協力により、公園や緑地、用水路の計画的な整備・維持管理、生物多様性の保全に努めます。また、地域資源をいかして賑わいや交流を醸成する公園整備を進めます。

地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの排出をゼロにする「脱炭素化」に向けて、市民の環境意識の醸成を図るとともに、ごみの減量化や再資源化、温室効果ガスの排出抑制、気候変動への適応など、市民の主体的な取組を推進することにより、持続可能な循環共生型の社会を構築します。

方針8 安全安心で快適な、住みやすいまちを形成する(市街地整備、道路、交通)

(12年間の取組の視点)

地域特性を踏まえた都市計画により、良好な住環境の維持・保全や適切な土地利用の誘導を図るとともに、市民参加による身近な地区まちづくりを推進します。

様々な機能が集積する鉄道駅を中心とした拠点の形成を促進するとともに、拠点同士を道路・交通ネットワークで結び、相互の補完や連携の強化を図ります。また、地域との協働により、広域的視点から地域の公共交通体系を構築し、多様な移動手段の創出による利便性の向上に取り組みます。

交通の円滑化及び安全安心に暮らせる交通環境の実現を図るため、都市の骨格となる都市計画道路の整備を着実に進めるとともに、鉄道立体化に向けた関係機関との調整を進めます。

長寿命化を踏まえた道路、下水道、橋りょう、公園などの適切な維持管理や、近年の気候変動に伴い多発する局地的な大雨等を踏まえた浸水対策(雨水管きょ整備等)により、安全安心な都市基盤整備に取り組みます。

関係機関との連携・協力体制のもと、各課題に対応した交通安全施策に取り組むことにより、交通事故発生を抑制します。

方針9 地域資源をいかし、活力と交流を生み出す(商工業、都市農業、観光)

(12年間の取組の視点)

市内事業者の活発な事業活動を促進するため、関係機関と連携して継続した支援を実施することにより、安定した経営基盤の整備や、創業しやすい環境整備に取り組みます。

にぎわいと交流の場の創出など、市民、商店会、事業者、経済関係団体及び市が協働して取り組み、魅力ある商店街を守り育てます。

地産地消・食育の推進、農産物の高付加価値化・ブランド化、農地の多面的要素の活用などにより多様な農業の担い手・支え手を確保するとともに、都市農業を振興し、農地の適切な保全につなげます。

民間活力を積極的に活用し、様々なイベント等の実施や、地域資源を最大限にいかした観光の充実を図ります。また、効果的・効率的な情報発信等による誘客を図り、地域が持続的に発展していくための観光振興に取り組みます。

市内の商業、農業、観光が融合し、小平市の魅力の発信と、市内全体に人の流れが行きわたる仕組みやコミュニティが生まれる空間づくりにより、さらなる地産地消の推進及び産業の活性化を図ります。

3 自治体経営方針

行政の役割

3つの基本目標(ひとづくり・くらしづくり・まちづくり)により将来都市像の実現を図るためには、市民等(市民、NPO・市民活動団体、民間事業者、教育研究機関等)による公共サービスの提供がますます不可欠になります。そのため、行政は、多様な担い手が円滑に活動できるための基盤(プラットフォーム)の構築を目指します。また、市民等が自ら解決できない地域課題を行政に委ねるという地方自治のそもそもの考え方を改めて認識しながら、行政は、地域自治のためのコーディネーター(仲介役)を担っていきます。他方、セーフティーネットや住民の権利の保護、住民の安全に関わる業務などは、引き続き行政が責任をもって実施します。

「経営」の意義

<自治体を経営するとは>

行政は、ビジョン(展望)や戦略を持ち、サービスの受け手の声に耳を傾けながら施策や事業を立案・展開し、PDCAサイクルの中で改善を図りつつ、資源(人材、資産、情報、アイデア、ノウハウなど)を有効に配分することが求められています。これらは、民間企業における「経営」の概念と共通のものがあり、市場の調査、サービスの価値向上、効果的なPRなどの面でも「経営」の考え方と手法を採り入れることは重要です。また、自治体の「経営」においては、最少の経費で最大の効果を生み出す合理性とともに、市民の視点に立ち、公開、参加の過程を開くことが緊要であり、今後も両立を図っていきます。

<なぜ今自治体経営か>

人口構成や経済状況の変化、社会資本の老朽化、安全・安心への対応、Society5.0時代の到来など、市を取り巻く状況の変化はめまぐるしく、ますます迅速な対応や説明責任が求められます。そのために、行政はさらに経営感覚に富んだ執行体制を構築していきます。加えて、これからの時代には、市民等がサービス提供の担い手であることにとどまらず、地域において経営の一端を担うという考え方も必要になってきます。公共サービスを提供するための経営資源についても、市民等と行政が、相互に乗り入れる方向性を構想していきます。

方針の内容

今後の自治体経営においては、上述のように、公共サービスの提供における行政の位置づけや、市民等と行政との役割分担を踏まえ、継続的に自治を発展させていくことを軸としていきます。その上で、脅威となる地震、風水害、感染症などに対するリスク管理にも配慮しながら、成熟社会において持続可能な自治体を築いていきます。そのためには、厳しい財政状況を見据え、事務事業の厳選や聖域なき見直しにより、一層の効率化を図り、健全な財政運営を確保します。また、今後の自治体経営に大きな影響を与えるものと考えられる課題として、ICT技術の進展と実用化及び多様な生活様式に即した働き方の変革に焦点を当て、先を見通した対応をしていきます。

自治体経営において重視する視点

自治の拡大・深化

小平市では、自治基本条例に基づき、市民、NPO、団体、事業者、教育機関など、様々な主体が地域の課題解決に関わってきました。今後は、地域の裁量の拡大も視野に入れつつ、多様な担い手により創出される公共サービスの絶対量や領域の拡大、成功事例の蓄積や横展開が求められます。

持続可能な行財政運営

社会経済の成熟に伴い、自治体を構成する重要な要素である人口やインフラ、暮らしを支える地域経済や住宅環境には持続可能性が必要です。市の財政運営や公共施設マネジメント、危機管理体制の強化など、厳しい局面においても、長期にわたり維持できるような取組が不可欠です。

ICT社会への対応

今日のICT技術の進歩と実用化は、破壊的イノベーションの到来といわれています。今後、労働力の減少が想定される中、Society5.0に描かれるスマート自治体を視野に入れ、行政運営の効率化や、公共サービスの価値向上を目指し、こうした新技術の導入に取り組む必要があります。

職員の力を引き出す市役所

人材や働き方が多様化する中、行政が持つ重要な資源である職員についても、時間的、物理的制約の有無にかかわらず、その力が最大限に発揮されることが必要です。労働環境にも配慮しつつ、リーダーシップのもと、時代に合った柔軟な発想や挑戦する組織文化、職場風土の醸成による好循環を図り、生産性の向上や業務の質的向上を目指すことが求められます。

このような視点のもと、次の方向性を定めます。

方向性1 地域資源によるサービスの実現

人材、資産、ノウハウといった様々な地域資源が公共サービスの創出に関与することは、今後も自治体経営を支える基本的な考え方となります。そのためには、施策の実施のみならず、サービスの提供方法を含め、これまで以上に多様な主体が連携し合い、協働を進めていくことが求められます。そこで、行政が地域自治のコーディネーターとしての役割を担うと同時に、市民と行政が一体となって、地域の課題解決にあたることができるような関係性を構築していきます。引き続き市政情報の共有、市民参加、及び協働を進めていくことを通じて、地域のコミュニティが醸成され、市民等が公共サービスの提供主体として関与する機会のさらなる拡大を図ります。

また、公共の領域に対する活動を通じた社会貢献や、寄附文化の気運の高まりを促進させ、企業や個人の社会参加の1つの形態として定着させることを目指しつつ、地域課題の解決に取り組む担い手には、裁量の拡大も視野に入れていきます。

公共施設の整備にあたっては、公民連携手法の導入を引き続き検討し、コストメリットだけでなく、民間の持つノウハウの活用等により、行政だけでは実現できない新しい付加価値の創出を模索します。

方向性2 将来に向けた財政運営・財産活用

小平市の財政面においては、歳出では、義務的経費の増大による財政の硬直化が見られ、歳入では、今後人口が減少することが見込まれ、それに伴う市税収入の減少が想定されます。加えて、公共施設の老朽化への対応や、新たな行政需要に対応するための財源も確保していかなければなりません。引き続き安定的、継続的に健全な財政運営を行うためには、実効性のある歳出削減と歳入確保を着実に行う必要があります。そのために、施策や事業に関するPDCAサイクルをより有効に機能させることで、事務事業の選択と集中を積極的に進めるとともに、既存の事務事業やサービスの改廃を含めた大胆な見直しを行います。これにより、次世代に過大な負債を残さず、新たな施策を生み出すための財源を確保し、持続可能な行財政運営を行っていきます。

公共施設については、その利用状況や設置目的及び維持管理に要するコストを明らかにし、費用対効果の点で検証した上で、運営のあり方などについて見直しを行い、公共施設に係る全てのコストの縮減を図ります。また、施設床面積の縮減を達成するために、将来的に想定される小・中学校の再配置と、コミュニティ施設の複合化のシミュレーションを行い、長期的視点から魅力ある施設づくりを市民等とともに進めていきます。

方向性3 運営・業務執行体制の効率化

今日、自治体の置かれている状況としては、事務事業の外部化により縮小が見込まれる一方で、地方分権改革や規制緩和の流れを受け、基礎自治体として担う必要のある事務が、なお増大する傾向にあります。このような情勢下では、一層効果的、効率的な事務執行体制を構築し、生産性を向上させていくことが求められます。そのために、戦略的に人材、予算、時間を集中投資することに力点を置き、不断の事務改善、創意工夫を行っていきます。少子高齢化社会における生産年齢人口、労働力の減少や、Society5.0時代に向けたICT技術の飛躍的な進展は、公務に対しても量的、質的に大きな変化をもたらすことになるため、将来の事務を展望した準備が欠かせません。時代の流れに沿った施策を展開していくため、スマート自治体への転換が不可欠であり、行政のデジタル化に沿った業務執行体制の効率化と、サービスの利便性向上等を目指します。また、近年の自然災害や感染症等の発生を踏まえた危機管理体制の強化を喫緊の課題として捉え、対応していくものとします。

方向性4 職員と職場の活性化

終身雇用、年功序列といった旧来の慣行が崩れつつある中で、働く個人の達成感や健康が重視される社会への対応が急務となっています。働き方が多様化し、労働と生活に関する意識が大きく変化する中で、職員が、その力を最大限に発揮できることが今後極めて重要となってきます。仕事に対する職員のモチベーションと生産性を向上させるため、組織全体の仕組みづくりと、各職場で対策に取り組むことが重要です。

組織全体としては、今後導入される見込みの定年延長など、新たな人事制度の動向を踏まえ適切に対応していくとともに、働く時間や場所の弾力化など、多様な勤務形態を可能とする制度設計についても検討していきます。職員に必要とされるスキルがますます多様化、高度化する中で、必要な人材をより戦略的に獲得、育成していく必要性が高まっています。職場においては、所属する部署を超えて目標や任務を共有するとともに、柔軟な働き方を受け入れる意識を醸成していきます。

4 基本目標横断プロジェクト

基本目標横断プロジェクトは、第四次長期総合計画の12年間を基盤づくりとして捉え、持続可能な社会を構築するために、基本目標である「ひとづくり」「くらしづくり」「まちづくり」と「自治体経営方針」を横断して取り組んでいく内容です。

プロジェクト1 自助・共助・公助により、防災・減災を強化します

趣旨

国では、東日本大震災の教訓を踏まえ、人命の保護が最大限図られることなどを基本方針とする「国土強靭化基本法」を公布・施行し、国土全域にわたる強靭な国づくりに向けた取組を進めています。小平市においても、自助・共助・公助の力を束ね、連携・協働のネットワークを育む視点を重視しながら、安全安心に暮らせる地域社会の実現に取り組んでいます。

しかしながら、近年の大規模地震や台風の大型化、多発する集中豪雨など、大規模自然災害の発生リスクの一段の高まりを受け、大規模自然災害が起こっても機能不全に陥らない、「強さ」と「しなやかさ」を備えた安全安心な地域づくりをより一層推進するため、「基本目標横断プロジェクト」として位置づけるとともに、各個別施策の指針としての考え方を示します。

ひとづくりの視点

防災訓練や啓発事業の実施をはじめとした幅広い防災教育により、自らの命は自ら守るという「自助」意識の定着化など、あらゆる世代への防災・減災意識の高揚を図ります。

避難所における様々な課題に女性の視点をいかすとともに、女性や若い世代を含めた防災リーダーの育成に努めます。

くらしづくりの視点

防災関係機関と連携し、自主防災組織の育成・支援に努め「共助」の能力を高めるとともに、市内事業者とも連携・協力し、市の防災体制の整備と強化を図ります。

感染症流行時における大規模災害の発生など、複合的な状況を視野に入れた情報伝達や避難のあり方について検討します。

まちづくりの視点

公園や農地は、火災の延焼防止や避難場所としての防災機能も担っており、適切な保全と活用に努めます。

緊急輸送道路の機能確保、建築物・下水道の耐震化のほか、近年の気候変動に伴い多発する局地的な大雨等を踏まえた対策を推進し、市民が安心して暮らすことができる、災害に強い都市基盤づくりを進めます。

自治体経営の視点

自然災害など、様々な危機事象に迅速かつ的確に対応するため、防災協定の締結などを含む関係機関との連携を進め、情報伝達体制や災害対応力など「公助」の強化を図ります。

テクノロジーの活用などにより、災害時における情報収集や伝達手段の充実を図ります。

災害時にも、優先すべき行政サービスが適切に提供できるよう、業務継続体制の充実を図ります。

プロジェクト2 新たな地域拠点とコミュニティの創出に取り組みます

趣旨

少子高齢化、核家族化、ライフスタイルの多様化などを背景に、地域での人と人とのつながりの希薄化や地域コミュニティの空洞化が進行する傾向にあり、従来、家庭や地域が担ってきた機能が低下しつつあります。一方、高齢者世帯や一人暮らしの高齢者をどう見守り支援していくのか、次代を担う子どもたちをどう育てるのか、多発する自然災害や巧妙化・悪質化する犯罪にどう対応するのかなど、身近な地域における課題は複雑化・多様化しています。こうした課題に対し、住民や地域コミュニティ、NPOなど多様な主体によって課題を発見、解決していく仕組みや、住民と行政がそれぞれの立場で役割分担し、連携、協力しながら対処する取組が求められます。これらのことを踏まえ、今後は、地縁に基づき形成された自治会の育成に加えて、多世代交流、地域で活躍する担い手の支援、それぞれの活動団体・個人のネットワーク化、多様なコミュニティの主体が集まることのできる場づくりを進めていく必要があります。

ひとづくりの視点

コミュニティスクールを充実させ、学校、家庭、地域等が一体となり地域の子どもたちを育んでいくことで、そこに関わる大人たちの成長も促し、ひいては地域のつながりを強め、地域づくりの担い手を育てます。

若い世代や子育て世代などを含め、多くの地域住民が、自分の住む地域の課題発見や魅力づくりなど、地域の事柄に関心を持つような取組を進めます。

学校が社会的なつながりを得られる場となり、地域の課題解決に向けた取組や大規模災害の緊急対応に、学校と地域が一体となって取り組む体制づくりを進めます。

くらしづくりの視点

障がいのある人や外国人も含めた多様な社会の構成員が、社会参加の機会を得られる環境や仕組み、学びの場をつくります。

公共施設の活用のみならず、市内にある様々な地域資源を活用し、多様な人々が手を取り合いながら、容易に移動できる生活圏の中に、近隣の人が気軽に集まることのできるコミュニティ空間を創出します。

まちづくりの視点

市内に7つの鉄道駅があるという特性をいかし、駅周辺地域の商店会など様々な主体と連携し、交流とにぎわいの創出を推進します。

小川駅西口の再開発ビルの公共床においては、生涯学習機能や市民活動の拠点となる機能など、多様な活動が重なりあう空間の創出に取り組みます。

自治体経営の視点

公共施設マネジメントの観点においては、今後、地域学習やコミュニティ機能を学校と複合化するなどにより、小学校を地域の核とした地域コミュニティの醸成を図ります。第四次長期総合計画の期間中に更新を迎える小平第十一小学校は、地域対応施設を小学校へ複合化する初めての事例であることから、公共施設マネジメントにおける学校施設の更新について、今後の方向性を示す先駆的な取組となります。また、中央公民館、健康福祉事務センター及び福祉会館の更新等に伴い、生涯学習機能、集会室機能等を複合化する新建物においても、多様な活動や交流の場を設けるとともに、地域課題解決の担い手育成を目指します。

小平市第四次長期総合計画基本構想

令和2年12月18日 議決

(令和2年12月18日施行)

体系情報
第1編 規/第4章 長期総合計画
沿革情報
令和2年12月18日 議決