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市史編さんこぼれ話No.21 「御嶽講と講碑、そして愛犬祈願」

更新日: 2012年(平成24年)2月10日  作成部署:教育委員会教育部 図書館

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大沼田の「表講中」

 地域共同性を測る指標の一つに講組織がある。講とは、宗教的なものから金融的なものまで幅広い。小平をはじめとする武蔵野に存立した代表的講をあげれば、念仏講、頼母子講(たのもし こう)、御嶽講、榛名講、大山講、三峯講、秋葉講、古峯講などがある。

 そもそも講の出発点は、中世の宗教団体にあるといわれている。念仏講などは、告別式のあと地域の老人が喪家で鉦(かね)を叩きながら念仏を唱和する集まりである。また、現在でも寺社が金銭を貸すところがある。資本証(もとであかし)といい、例えば千円借りると、翌年の参詣時には倍の二千円を返すのである。利子というわけである。まさに寺社が金融機関の役割をしているのである。頼母子講もこの一種といっていい。困った人のために金銭を融通する組織である。初回は当人に、次回からは講員がセリ、高額な人に落札される。セリ金が利子となり、講員の懐に返ってくる。関東などでは無尽ともいう。

 寺社へ参拝する講としては、伊勢、富士、榛名、大山、秋葉などがある。集落(ムラ)から代表者二、三名が、神社仏閣へ参拝に出かけるのである。毎年、代表者が変わり、参拝の旅に出るのである。こちらは物見遊山の感がないわけではない。

 緊急を要する神社参拝もときにはある。干ばつである。武蔵御嶽神社への参拝は、多くはこのときであった。日照りがつづき、作物が枯れるなどの被害が出はじめると、集落の若者が御岳山に雨乞祈願に出かけたのである。二人一組で早朝に出立、武蔵御嶽神社に参拝後、宿坊で一泊、翌日は七代の滝(ななよのたき)で神水をいただき、一目散に集落まで戻ってくる。途中、後ろを振り返ってはいけないなどの禁忌があった。もちろん神水をこぼすことなどは許されない。一心不乱に帰村し、神社に神水を供えたあと、神水を堰き止めた用水路に流す。そこに若者が飛び込み、六根清浄を唱えながら水を掛け合う。すると不思議に、空に暗雲が垂れ込め、雨が降り出したという。

 感謝の気持ちの表れは、武蔵御嶽神社に奉納された多くの講碑にも見られる。小平関係では大沼田の「表講中」のものが、山門近くに建立されている。見ていると、かつての農家の人々の苦労が偲ばれ、胸を打たれる。

 その雨乞祈願もいまは廃れ、武蔵御嶽神社はハイカーの山と化している。そのうえここ数年来はちょっとした変化が現れているようだ。御岳山が犬連れで登山を楽しめることから、愛犬家の参拝者が増えているのである。

 武蔵御嶽神社の眷属(けんぞく、神に従属する使者)は「おいぬ様」である。盗難除け、魔除けの神(大口真神=日本狼)である。それにちなみ、愛犬の安全・健康祈願に詣でる人が増えたのであろう。しかしながら私達を守ってくれた犬が、逆にお祓いを受ける光景をながめていると、時代の流れとはいえ、なんとも不思議な気持ちになってしまうのは私だけではあるまい。


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