小平市役所
法人番号:2000020132110
〒187-8701 東京都小平市小川町2-1333
代表 042-341-1211
一度見たら強い印象が残る鮮やかな色使い。
今にも動き出しそうな躍動感あふれる表情。
歌舞伎の演目「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」の一瞬を切り取ったこの彫刻は、平櫛田中が生み出した「鏡獅子」と呼ばれる作品です。
小平と縁が深い田中が、「鏡獅子」に賭けた情熱に触れ、この作品の魅力に迫ります。
田中に、歌舞伎役者六代目尾上菊五郎を作品にする話が届きます。
この時、作品は「春興鏡獅子」しかないと決めていた田中は、毎日劇場に通い、あらゆる場所から菊五郎を観察して「この瞬間しかない」という姿をとらえます。
昭和11年、田中64歳。人生を賭けた挑戦が始まりました。
まず、歌舞伎の厚い衣装を形にするだけでは迫力ある姿を作ることができないと考えた田中は、衣装の下に隠れている体の研究を始めます。
「裸でモデルをしてくれないか」という直談判に、菊五郎は快く応じました。
菊五郎は、弟子に歌舞伎の稽古をするときには裸で体の動きを教えていたので、田中の考えを理解してくれました。
裸姿の菊五郎を見て、筋肉の隆起や体のしなやかさを知ったことで、生きているかのような躍動的な表現を可能にしました。
そして、「鏡獅子試作裸像」が完成します。
姿勢を決めた瞬間と緊張感を切り取った作品です。
この裸像をもとに制作されたのが、きらびやかな衣装をまとった「試作鏡獅子」です。
完成の姿をとらえた田中は、鏡獅子を全長2メートルの作品に仕上げるべく、制作にかかりました。
試作鏡獅子を2メートルの木彫に拡大したところ、絶妙なバランスが崩れてしまいました。
像が大きくなったことで頭が小さく見え、頭を大きくすれば体のバランスが狂う。
1箇所を直せば別の箇所が狂ってしまい、部分的な修正では解決できない問題にぶつかります。
何度作り直しても上手くいかないうちに太平洋戦争が始まり、制作は中止せざるを得なくなりました。
終戦後、六代目尾上菊五郎が亡くなったことなどをきっかけに、昭和27年に田中は鏡獅子制作の再開を決意します。
崩れたバランスの解決策として小型試作を原型にすることをやめ、最初から2メートルの大きさで作ることにしました。
粘土で鏡獅子の持つ迫力を作り、全体のバランスを整える。
そして、完成した粘土像から木の彫刻に仕上げました。
試行錯誤の後、ついに満足のいく木像が出来上がりました。
この木像に金箔を貼り、彩色を施して、田中の最高傑作、鏡獅子が完成しました。
制作開始から22年。田中86歳の時です。
完成した鏡獅子を、政府が二億円で買い取る話が出ましたが、田中は断ります。
「自分一人で作ったものではなく、菊五郎さんと一緒に作ったものですから」と言い、東京国立近代美術館に寄贈しました。
現在、鏡獅子は伝統芸の殿堂、国立劇場に飾られています。
田中が残した作品や、暮らした館を公開しています。
また、館内ガイドによる作品の解説を定期的に行っています。
玉川上水の散策と合わせて立ち寄ってみてはいかがですか。
鏡獅子試作裸像
1面写真の左側に写っている鏡獅子裸像を展示しています。
腕やももの筋肉の張りが見事に表現されていて、今にも動き出しそうな迫力を味わえます。
鏡獅子
鏡獅子完成後、小型の試作原型に基づいて作成されたもの。
大きさは国立劇場に展示されているものの4分の1ですが、指先の精巧さや表情のつくりを間近でじっくりと見ることができます。
五十鈴老母
田中最後の彫刻作品。
モデルは三重県伊勢市の銘菓「赤福」店主。
頭部は伊勢で作り、体は上野桜木町のアトリエと小平の自宅で作りました。
一橋学園駅南口から徒歩10分
開館時間
午前10時から午後4時まで
休館日
火曜日(祝日に当たる場合は、その翌日)
観覧料
一般 300円(220円)、小・中学生 150円(110円)
(注) カッコ内は、団体20人以上。
(注) 駐車場を利用の方はご相談ください。
問合せ
平櫛田中彫刻美術館 電話042(341)0098