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市史編さんこぼれ話No.8「働きながら家事・行儀見習い」

更新日: 2010年(平成22年)4月20日  作成部署:教育委員会教育部 図書館

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明治40年生まれのSさんは、6人兄妹の5番目、本当は3年前に生まれたんだけど親が忙しくて役場に届けるのを忘れててねーと笑って話し始めました。元気で気配りのよい働き者のSさんの昔の話です。

奉公に出る

11歳の時から近所の子守りに出ていて、三度のご飯を食べさせてもらってね…という。

14歳の時、兄さんが奉公していた大泉の工場に子守りにいき、3年間の前金6円をもらったとのこと。17歳から東京の青山や四谷の屋敷町でお手伝いさん(女中さん)をしました。(当時農家の娘さんは近在や東京で女中さんをした話を聞いているが)私はよく働くので自慢じゃないけど「ねいやねいや」って私を欲しがる人が多くて、次の家へと順に望まれてね送られちゃった。だから随分方々歩いたね。その頃の小遣いは10銭くらいでした。貯金する間もなかった。だって貯まれば家に送っちゃうでしょ。私は化粧したこともないからお金も要らない。石けんを使うくらい。クリームもつけないけれど、ひびもきれなかったです。

満州での仕事

大正10年に父親が亡くなり小平に帰ったけど、すぐに小川のОさんの家にお手伝いにいったんです。給金は12円でした。間もなくご主人の弟さんが満州に勤めることになり、奥さんに付いて私も満州にいくことになりました。神戸から三日三晩船に揺られて大連まで、そこから列車で旅順に着きました。ご主人の家は大きくて部屋が七つもあり、廊下も広くてね。外は寒いのにペチカが三か所も燃えていて、部屋は暖かかった。六畳か四畳半だったかの自分の部屋も貰えて、中国人のお手伝いさん、お勝手(炊事係)をする二人のボーイもいました。ここでの暮しは始めは家を思い出して寂しかったけど、すぐに慣れましたね。

私の仕事は二人の子どものお守り(小学一年の男の子の学校の送り迎えと、下の女の子のお世話)でした。坊ちゃんに「Sや、これ読んで」なんて言われるから、さあ大変、私は学校に行ってなかったから字が読めないでしょ。新聞見てカタカナ・ひらがなを覚え、やっと読めるようになりました。カルタや輪投げの相手もしました。言葉遣いは最初に奥さんから教えてもらいましたから、「おめよー」なんて言わない。「お嬢さま、こう遊ばせ。そうなすっちゃいけません。」っていう具合。苦労しましたね。後になって亭主に「満州にいっていたというけど、お前言葉が悪いな」って笑われたんですけど、百姓しながら「あなた」なんて言えないでしょーとはっはっと笑いました。言葉遣いや挨拶は厳しく言われましたよ。

満州での思い出

奥さんは家で裁縫したり絵や書道を習ったりしてましたが、私には四つ身や一つ身帯の縫い方を教えてくれました。旦那さんが出かける時に車や馬車に乗って御供をすることもありました。五月の満州はアカシアの白い花が咲いてそれはよい香りがしてました。

そうね、関東大震災のことは満州の公会堂の写真で知り、小平の方は大したことないらしいので、ほっとしました。

お給料50銭上がって12円50銭に。10円ずつ貯金して30円貯まったから小平へ送りました。撚り屋をしていた私の家で工場の屋根を修理するというのでね。通帳にちゃんと残ってる。

つらいことは別になかった、食べさせてもらって働けばいいんだからー。2年くらいして、山口に帰る人がいたので私も帰りたくなり一緒に日本に帰って来ました。

帰ると又、田無の方の家に半年くらいお手伝いにいきました。そこではおさんどん(台所働き)をしました。子ども二人のお偉いさんの家で、少し厳しくてつらいことがあったね。

それがある日、満州の前のご主人の知り合いから手紙が来て「Sやをお手伝いさんにほしい」ってことで、田無のご主人には「嫁にいく」と嘘ついて暇をもらい、また満州にいきました。


働き者で律義なSさんは、ご苦労が沢山あったでしょうに、昭和4年に小川でお婿さんをもらうまでの話を、訥々と話してくださいました。


宮本常一著『家郷の訓』に、母親の若い頃の子守り奉公のはなしがある。当時の村の女中奉公・農作奉公のことも書いているが、昔はどこの村でも年頃になると親を助けるために幼いながらも家を出た。今のように社会に出て働く機会のあまりなかった農村の娘たちは、そこで健気に働きながら家事・行儀見習いをし、嫁入り仕度まで自分でしたと聞いている。


お問合せ先

〒187-0032 
小平市小川町2-1325

中央図書館

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